サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

2018-12-31から1日間の記事一覧

C. 殺人 ⑩

「ふ~ふふ~ん。ふ~ふふ~~ふ~」 随分と機嫌がよく、鼻歌交じりの細い声が波の音に飲み込まれる。 「ふ~ふふ~ん」 他に聞こえてくる音と言えば、ザク……ザク……と軽快なリズムを奏でる砂の音。 時たま聞こえてくる不協和音は、スコップと貝殻がこすれる…

XCIX. 法律

法律の勉強がしたくなって、僕は大学進学を選んだ。 高校では理系だったものの、突然法律に興味が湧いてしまったから先生の反対を押し切って文転した。 受験科目がいくつか変わり、社会科目をもう一つ選ばないといけなくなった。 正直、試験3か月前のこの時…

XCVIII. 恐れるもの

サイコパスは、虚しくなった。 高層ビルの屋上。 空を眺めれば、どんよりとした曇り空が見つめ返してくる。下を覗き込むと、溢れかえる人の集まりが目に入る。 満たされない胸の奥が、うずうずと悶える。 何が欲しいのか、何をしたいのかも分からず、ただだ…

XCVII. 女ってやつは

サイコパスは、ふつふつと湧き上がる憤りを覚えた。 僕は、真面目な青年。勉強と只管に向き合い、運動においても決して手を抜かない。 ただのガリ勉ではなく、何事にもまっすぐなだけだ。 その気質のせいなのか、最近気に食わないことがあった。 どう考えて…

XCVI. 破壊衝動

形あるもの、いつか壊れる。 人には何かを破壊したいという欲がある。 だが壊すものがなんでもいいというわけでもない。 サイコパスは、決まったものしか壊さない。 手ごろに手に入るもので言えば、ビー玉。 それに、明かりの点いている電灯。 あとは、ワイ…

XCV. ムービー・フォーエバー

目の刺激は耳の2,000倍。 どこかでそんなことを聞いた。 確かに……そうかも。 頑張って働き続けた1日の終わりに目が辛くなることって結構あるよね。 目を閉じて深呼吸してみると、疲れがどっと溢れてくる。じっとりとじっとりと味の出てくるモツ肉を噛み締め…