サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

サイコなパスな考え方(超短編小説)

LXIX. 苦の粉

サイコパスは、苦しんでいる。 やばい、ヤバい、マジ……ヤバすぎる。 今までオレもいろいろな粉に手を出してきたけど、こいつはヤバすぎるぜ。 なんてったって、中毒性も快楽もないのに、苦しみだけは襲ってきやがる。 吸ってる感覚がなくても勝手に体の中に…

LXVIII. 挨拶

サイコパスは、割と礼儀正しい。 その辺のクズより、その辺のギャルより、その辺のヤンキーより。 サイコパスは、礼儀を重んじる。 「おはよう」 「こんにちは」 「こんばんは」 「おはようございます」 「こんちは」 「こ~んば~んは~」 「おはーっす!」…

LXVII. ぐるぐる

サイコパスは、趣味を持つ。 私は今、28歳。いい年して結婚もしないでアパートで一人暮らししています。 普通のOLをしています。受付嬢みたいに可愛いわけではないですが、それでも一生懸命仕事をしています。時代遅れのセクハラ、男尊女卑に囚われた男性社…

LXVI. 同じなのか

人は皆、同じなのか……? サイコパスは考えた。 ときどき思う。 喜びや悲しみ、怒りや憎しみ、痛みや恐れ。 その感情・感覚は共通のものなのだろうか。 経験からものを言えば「そりゃそうだ」と簡単に答えが出る。 友達と遊べば楽しいし、嫌なことをされれば…

LXV. 俺もだった

ムカつく…… 今日もまた、満員だ。 サイコパスは、ため息をつく。 電車が満員なのは仕方がない、と百歩譲って許そう。 ムカつくのは……ここまで俺のことを苛立たせるのは、リュックを背負うクズどもだ。 サイコパスは、リュック勢を睨みつける。 邪魔なんだよ…

LXIV. 28、多くて32。

最も大切だと私は思う。 生きる上で、長く生きる上で、最も大切なものの数が、28、多くて32。 これがなければ、生きることは難しくなる。たとえ生きられても、ひ弱になる。 永久に付き合うそのものは、力となる。 痛みと闘う時も、悲しみと向き合う時も、恐…

LXIII. シチュー

ぐつぐつと、煮えたぎる鍋に具材を放り込む。 ニンジンさん…… ジャガイモさん…… タマネギさん…… …………? サイコパスは、お肉片手に動きを止めた。 あれ……? このお肉の名前、何だったかしら? さっきまで覚えていたのに……年を取ると記憶力が悪くなっていく。 …

LXII. 道化

サイコパスは、夢を見た。 不気味なピエロが追いかけてきて、殺そうとしてくる夢を。 その殺人ピエロから逃げるためにひたすら走る。 でもどうしてか、ピエロとの距離が変わらない。 息を切らせながらどんなに足を動かしても、ピエロは不気味な笑顔でナイフ…

LXI. 文字

『文字には、命がある』 サイコパスは、学生時代にもらったラブレターを机の奥底から見つけた。 久しぶりに日の光を浴びたラブレターは、長い年月をかけてうっすらと色あせてしまっていた。 ザラザラとした紙の耐久力は弱くなり、少しでも雑な扱いをすれば今…

LX. 殺人 ⑥

うぇ……さすがにもう気持ち悪い。 サイコパスは、肉が刺さった状態のフォークを皿の上に置いた。 カランと金属音が鳴り響き、不快感を刺激する。 今日で何日目だろうか……? 朝昼晩とずっとお肉を食べている。 ステーキだけじゃ飽きてしまうから、唐揚げや肉じ…

LIX. 殺欲

あぁ……殺したい。 久しぶりに人を殺したい。 サイコパスは、殺欲を覚えた。 たまにこういう気分に陥る。 何だろう……刺激が何もない時にそう感じるのかな。 何もすることがない時、ごく稀にそういった欲望に心が支配される。 一度そうなったら、もはや理性だ…

LVIII. 孫

孫は本当にかわいいもんだよ…… サイコパスは、機嫌がいい。 久しぶりに顔を見せてくれた孫は、何やら嬉しそうな顔をして、寄り添ってきた。 話を聞くと、どうやら学校でいいことがあったそうな…… 「ねぇ、おばあちゃん! 今日ね、今日学校でね、先生に褒めら…

LVII. 都会

サイコパスは、理解できない。 都会という場所に集まる人々。 その存在はまるで意味不明だ。 交差点に集まる人々。 日々多くの者が肩と肩がぶつかるすれすれのところを通って歩く。 電車に詰められる人々。 毎日仕事に向かうために汗と加齢の臭いに包まれ、…

LVI. 告白

シトシトと、降る雪積もる、クリスマス。 赤らめる、乙女心が、溶かすかな。 サイコパスは、愛の告白を受けた。 正直な話、突然呼び出されて戸惑っている。 ドキドキと無意識に鼓動が高鳴っている。 サイコパスは、目の前でタジタジする可愛い瞳を見つめる。…

LV. 最後の晩餐

おいっ! いい加減にしねぇとそろそろマジで殴り殺すぞ! サイコパスは、店内の雰囲気と香りに耽っている。 久しぶりに地元に帰ってきて、学生時代に通っていたうどん屋に足を運んだ。 相変わらずコシが強くてのどごしがよく、鰹の香り広がる出汁もうまい。…

LIV. 面接

サイコパスは、面接に立ち会った。 「はい、それでは、あなたのお名前を教えてください」 サイコパスは、マニュアル通りに面接を始める。 だが……退屈だ。 この人ですでに20人目だが、ここまでに面白い人が一人でもいただろうか。 即答できる……ノーだ。 同じ…

LIII. 守りたい

みんなは、こどもって好き? こどもって可愛いよね。 見てるだけで癒される。 知らない子でも、守ってあげなくちゃって思わされる。 でもね、そう思うのは、常人だけなんだよ。 サイコパスは、ちょっと違う。 本来人間には、丸いものや手足が短いものに愛お…

LII. 髪

サイコパスは、髪を洗っている。 肩下まである長く黒い髪を、丁寧に一本一本洗っている。 高級なシャンプーとリンスを使い分けながら、時間をかけて丁寧に丁寧に丁寧に丁寧に洗っている。 これが洗い終わったら次はあの子の髪を洗ってあげないと…… サイコパ…

LI. ねむってはいけない

サイコパスは、重い瞼を持ち上げる。 いつからだろう……もうわからないや。 一度目を瞑ってしまったら二度と目を覚ますことがないんじゃないか…… いつからかそんな恐ろしい想いを抱いてしまい、眠ることを拒んできた。 サイコパスは、目をこする。 いや……ほと…

L. 殺人 ⑤

よし! できた! ようやくできた! サイコパスは、ネックレスを自作した。 一度作ってみたかったんだよねー、オリジナルのネックレス。 骨で作り上げたから、すごくロック感漂ってるわー。 それにしても、思ったよりも骨を切断するのには手間がかかった。 今…

XLIX. ラーメン

あぁ、もう食えねぇ…… サイコパスは、割り箸を置いた。 つうか、こんな脂っこいラーメン食えるわけねぇんだよ。 もう年だし、若い時みたいにはいかねーよ。 マジで、胃もたれするなんてレベルじゃねーぞ、これ。 もう気持ち悪くて、ゲロ吐きそう……。そんで、…

XLVIII. おばあちゃん

「ねぇおじいちゃん。おじいちゃんはどんな食べ物が好きなの?」 「ねぇおばあちゃん。おばあちゃんはどんな食べ物が好きなの?」 こういう風に言うと、あたしのおばあちゃんは不機嫌になる。 いや、不機嫌になるぐらいならまだマシな方。 本当に機嫌を損ね…

XLVII. 君しかいない

牡蠣フライ定食を注文したものの、喉を通るわけがなかった。 箸を持つ手を下ろし、痛みだす胸に手を当てる。 冷静になって初めて、溢れる悲しみの波に襲われた。 痛みは次第に大きくなり、耐えることはできそうにない。 サイコパスは、定食屋を後に交番に向…

XLVI. クリスマス

サイコパスは、彼氏を殺してきた。 今日は、クリスマス。 粉ミルクが大空から舞い散るかのように、甘い記念日がやってきた。 昨日まで付き合っていた愛しい彼氏は、もういない。 彼は私のためにプレゼントを買ったりと、この日を楽しみにしていたらしいが、…

XLV. しょうがない

サイコパスは、人を殺した。 だって、電車が込みすぎていて狭かったんだもん。 何人か殺して減らすのが最善策だとその時思ったんだもん。 しょうがないじゃないか。 サイコパスは、人を殺した。 だって、僕の横を通ったあいつの目が気に食わなかったんだもん…

XLIV. チョコレート

みんなは今日が何の日か知ってる……? そうなの! 今日はバレンタインデーなの! サイコパスは、この日を楽しみにしていた。 私好きな人がいるから、この日をずっと待ってたの。 彼に一目惚れした時から思ってた。私の手作りお菓子を食べてもらいたいって。 …

XLIII. 左利き

サイコパスは考えた。 世界人口の7割を占める、右利き。 残りの3割を占める、左利き。 この世界は、左利きにとって非常に生き辛い世の中だ。 文字を書く時には、自ら書いた文字で手が汚れる。 駅の改札口の切符入れは右側にしかない。 世界で作られる道具の…

XLII. 一目惚れ

サイコパスは、一目惚れをした。 僕には最近、気になる人がいる。 一目見たとき、突然心をギュッと鷲掴みされた感じがした。 苦しいと感じると同時に、頭の中でベルが鳴り響いた。 サイコパスは、ある女性に釘付けになった。 その女性の瞳はこの世界の何より…

XLI. 悪魔

サイコパスは考えた。 サイコパスは、どうして嫌われるのだろう。 サイコパスは、どうしてみんなから嫌悪の眼差しを向けられるのだろう。 サイコパスは、どうして友達ができないのだろう。 サイコパスは、どうして常人としての扱いを受けることができないの…

XL. 殺人 ④

トントントン。 トントントン。 トン……ザクッ……トントントン。 ザクッザクッザクッ…… サイコパスは、朝食を作っている。 トントントン……ザクッ。 トントントン……ザクッ。 包丁の扱いには慣れているが、たまに引っかかる筋はやっぱり切りにくい。 トントン………