XXIII. ドライブ
サイコパスは、走りながら考えた。
教習所に通っていた時から、なんとなく感じていた。
アクセルの上に足を置くと、無性にスピードを上げたくなる。
横転するほどの勢いで、ハンドルを切りたくなる。
その衝動に日々駆られる。
もし本当にそんなことをしたらどれほど危険なことなのか、頭では分かっている。
自分の命に危険が及ぶだけでなく、人様に迷惑をかけてしまうということも重々承知だ。
でも、どうしてもやりたくなる。
頭を振って無理矢理その考えを振り払っても、理性の壁を超えようと衝動が暴れ出す。
この抑えきれない衝動に駆られる気持ちは、おそらく常人には理解できないのだろう。
止められない……どうしようもないんだ。
少しでも集中力を失ったら、すぐにでも壁が崩壊し衝動が顔を出す。
そうならないよう必死に抑え込むが、もう無理そうだ……
サイコパスは、高速道路に侵入した。
数分後、天地が入れ替わる様を目にし、体にかかる圧力を感じた。
粉々となったガラスが宙を舞い、燃えさかる炎の熱を感じた。
でもそれとは別に、心が穏やかになる不思議な感覚を得た。
壁の決壊と同時に込み上げてくる……開放感。
もうこれ以上は自分を押さえる必要がない……安堵感。
サイコパスは、自分を抑え込もうと必死に努力した。