サイコパスの素顔

『サイコパス』を主とする小説を書いていきます

XXXIV. 死者と供に

 

 サイコパスは、葬儀屋で働いている。

 

 毎日のように死者と向き合い、誠心誠意をもってお見送りしている。

 この仕事は、体力的にも精神的にも大変な仕事だ。生半可な気持ちでできるほど甘くはない。

 

 だが私にとってこの仕事は、天職だ。

 

 サイコパスは、死者にしか興味がない。

 

 生きた人間には全く興味がなく、死んだ人間にだけ心を開ける。

 そのことに気づいたのは、母が死んだ時だった。

 

 お通夜の時、自然と私は棺桶に横たわる母に向かって話しかけていた。

 普段言えなかった感謝の気持ちや内に秘めていた気持ち、ダムが決壊したかの如く、あらゆることが口から溢れ出ていた。

 そして話せば話すほど、母が偉大であったことに気づかされた。

 母が私を愛してくれたこと、私がその愛に応えられなかったことも痛感した。

 

 生きていた頃の母の人生や想いが、『死』をもって初めて私の身に染みた。

 

 サイコパスは、死者と会話した。

 

 葬儀屋の仕事で私は、母の死を胸に、死者と真摯に向き合える。

 死者の歩んできた人生が、死者と話すことで垣間見ることができる。

 そしてその者の想いは、私の中で生き続ける。

 

 死人に口なし……言葉を交わさなくとも死者の想いは受け継げる。

 

 サイコパスは、死者と供に棺桶で眠る。