サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

XXXVII. 眠れる森の美女

 

 サイコパスは、肩に圧力を感じた。

 

 何かと思い右を見ると、黒い闇がぼくの肩を覆っていた。

 

 艶のある黒髪……どうやら女子高生のようだ。

 

 かなり疲れているらしく、電車が揺れても起きる気配はない。

 マフラーを巻いて暖かそうな格好をしているこの娘は、とても気持ちよさそうに眠っている。

 

 邪魔だなぁ、起きろよクソアマ……って思っちゃう性格の悪い人もいるだろうけど……

 

 サイコパスは別に悪い気はしない。

 

 むしろ起こしちゃ悪いと思って、右腕を動かさないようにそのままフリーズさせた。

 

 これからの世の中を担っていく若い女の子が疲れ切って寝ているこの状況。

 勉強や部活を頑張ってきて今日も一日大変だったんだなぁ、って見て思う。

 

 ぼくには起こさないようにそっとしておくことしかできないけれど、それがこの娘に対してできる最も親切な行動だと思う。

 

 普段のぼくは、人の役に立てるようなことのできる良い人間なんかじゃない。

 でもたまには、ぼくだって世の中の役に立ちたい。人のために、何かしたい。

 

 だから、こんなことしかできないけれど……右腕は君にあげるから、気にしないでゆっくりおやすみ。

 

 サイコパスは、右腕を残して電車を降りた。