サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

XL. 殺人 ④

 

 トントントン。

 

 トントントン。

 

 トン……ザクッ……トントントン。

 

 ザクッザクッザクッ……

 

 サイコパスは、朝食を作っている。

 

 トントントン……ザクッ。

 トントントン……ザクッ。

 

 包丁の扱いには慣れているが、たまに引っかかる筋はやっぱり切りにくい。

 

 トントン……ザクッ。

 トン……ザクッ……トン。

 

 軽快なリズムで音を奏でるのは難しそうだ。

 

 サイコパスは、ステーキを食べることに決めた。

 

 朝からステーキを食べるなんてヘビーだ! って言う人もいると思うけど、僕は案外いける方だ。

 ていうかむしろ、お肉は大好きだから、毎日でも飽きないと思う。

 

 それで今、僕はお肉を切っている。

 

 でもこのお肉、冷凍されたお肉みたいに硬くて切りにくい。

 それに脂も酷くて包丁が滑ってしまう。

 誤って自分の手を切ってしまったら大変だ。気を付けないと……

 

 サイコパスは、お肉を焼き始める。

 

 ジュゥゥゥゥウウウウ!!

 

 熱したフライパンに勢いよく放り込むと、お肉は元気よく騒ぎ出した。

 

 内側から溢れる油は飛び跳ね、食欲をそそる香ばしい香りが一気に充満する。

 

 食べたことないが、見た感じこのお肉のステーキはうまそうだ。

 

 味付けは塩と胡椒。

 それだけで十分だ。

 お肉本来の味を楽しみたいから、無駄な調味料は一切いらない。

 

 サイコパスは、お肉をひっくり返す。

 

 うん、いい感じに焼き目がついている。

 もう少し焼いたら食べようかな……焼きすぎて硬くなっちゃったらイヤだし。

 

 サイコパスは、切りすぎたお肉を冷蔵庫に整理する。

 

 結構あるな……

 ひとり暮らしの冷蔵庫じゃ、収まり切れそうにない。

 

 ……仕方ない。

 もったいないけど捨てるしかないかな。

 

 でもどこを捨てたらいいんだろう……?

 どの部位がうまくてどの部位がまずいかなんて分かる訳もない。

 なんせ初めて口にするお肉だからね……

 誤って美味しい部分を捨ててしまったら大変だ。

 

 うーん……よく分からないから、後で考えようかな。

 うん、それでいいや。

 

 サイコパスは、考えることをやめて、ステーキに食らいついた。