XLV. しょうがない
サイコパスは、人を殺した。
だって、電車が込みすぎていて狭かったんだもん。
何人か殺して減らすのが最善策だとその時思ったんだもん。
しょうがないじゃないか。
サイコパスは、人を殺した。
だって、僕の横を通ったあいつの目が気に食わなかったんだもん。
あんな目つきをした人間がいたんじゃ治安が悪くなるって正義感に駆られたんだもん。
しょうがないじゃないか。
サイコパスは、人を殺した。
だって、貸したゲームを友達はいつまで待っても返してくれなかったんだもん。
約束が守れない奴は死ぬべきだって声が頭の中で鳴り響いたんだもん。
しょうがないじゃないか。
サイコパスは、人を殺した。
だって、化粧を落とした彼女の顔がいつもの彼女とは違かったんだもん。
おそらく知らないうちに彼女が違う人と入れ替わってしまったんだと思うもん。
しょうがないじゃないか。
サイコパスは、自分を殺した。
だって、留置所の中は寒くて寒くて凍えそうで体内を流れる血液の方が温かいって思ったんだもん。
それで自ら手首に歯を立てて思い切り食いちぎった。そしてドバドバと流れる温かい血液に包まれながら、息を引き取った。
サイコパスは、思った。
しょうがないじゃないか――