サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

LII. 髪

 

 サイコパスは、髪を洗っている。

 

 肩下まである長く黒い髪を、丁寧に一本一本洗っている。

 高級なシャンプーとリンスを使い分けながら、時間をかけて丁寧に丁寧に丁寧に丁寧に洗っている。

 

 これが洗い終わったら次はあの子の髪を洗ってあげないと……

 

 サイコパスは、奥の部屋から長い髪を持ってくる。

 

 日光を当てると綺麗な輝きを放つ金色の髪。

 

 黒髪を洗い終えた後はその金髪を洗い始めた。

 手を消毒して、お湯の温度を調節して、髪をそっと撫で下ろす。

 

 サイコパスは、艶のある髪の感触に鼓動が高鳴る。

 

 いつからだろう……こんな快感を覚え始めたのは……

 女性の綺麗な髪に触れているときが、唯一幸せを感じられる。

 

 何時間でも、何日でも、何週間でも、何か月でも、何年でも、死ぬまで髪に触れていたい。

 綺麗に手入れをして、清潔美しさを保ち続けることが使命であり、快感である。

 

 この子が終わったら、次はあの子を洗ってあげないと……

 その子が終わったら、次の子を洗ってあげないと……

 その次もその次もその次も……ずっとずっと。

 

 サイコパスは、呪いにかけられたように髪を洗い続ける。