サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

LVI. 告白

 

 シトシトと、降る雪積もる、クリスマス。

 赤らめる、乙女心が、溶かすかな。

 

 サイコパスは、愛の告白を受けた。

 

 正直な話、突然呼び出されて戸惑っている。

 ドキドキと無意識に鼓動が高鳴っている。

 

 サイコパスは、目の前でタジタジする可愛い瞳を見つめる。

 

 女の子は恥ずかしそうに、それでいて勇気を振り絞ってなんとか言葉を紡ぎだしている。

 男なら誰しもが共感できると思うが、モジモジしているその彼女の姿はとても可愛い。

 

 だが……

 

 サイコパスは、その子の言葉など聞いてはいない。

 

 うんうん、と頷いてはいるものの、その子の言葉は耳を左から右へとストレートに抜けていた。

 だって、その子のことをよく知らないしこれから恋人関係を築こうとなどとも思っていない。

 ただ、今この状況を楽しみたいだけだ。

 

 僕は運がいい。

 この広い世界で、クリスマスという素敵なイベントの中、話したこともない可愛い女の子から告白を受ける確率などどれほど低いことか。

 本当に僕は運がいい。

 

 奇跡ともいえるこの瞬間。感謝したいと心から思えるこの時間。ふたりを包み込むこの空間。

 こんな体験を味わえるなんて貴重であり刺激的。

 

 サイコパスは、刺激を吸収することで頭がいっぱいだ。

 

 この子の話が終わったら、すぐに告白を拒否するつもりだ。

 えっ、なんでそんなことするの。そんなことをしたら、頑張って自分の気持ちを伝えてくれたこの子が傷つく……なんてことは百も承知だ。

 でもそんなこと僕には関係ない。

 僕は貴重で刺激的なこの状況を楽しんでいるに過ぎない。この子がどんなに落ち込もうと構わないし僕にはメリットもデメリットもない。

 

 クリスマスに勝手に告白して、フラれるだけ。

 ただそれだけのことだし……

 

 サイコパスは、相手を思いやる感情が欠如している。

 

 まぁ、なんにせよこの言葉だけは君に送ってあげるよ……ハッピーメリークリスマス。