LX. 殺人 ⑥
うぇ……さすがにもう気持ち悪い。
サイコパスは、肉が刺さった状態のフォークを皿の上に置いた。
カランと金属音が鳴り響き、不快感を刺激する。
今日で何日目だろうか……? 朝昼晩とずっとお肉を食べている。
ステーキだけじゃ飽きてしまうから、唐揚げや肉じゃが、ミンチにしてハンバーグを作ったりと、試行錯誤して胃の中に放り込んできた。
でも、そろそろ……限界。
サイコパスは、吐きそうになりつつも、グッと堪え口の中のお肉を飲み込んだ。
お肉は好きだから飽きないと思うって言ったけど……前言撤回。
やっぱきついわ……
彼女のことが好きだということを考慮しても、正直もう無理だ。
というか、彼女のことが嫌いになりそう……
サイコパスは、フォークを突き立てた。
なんでこんなに脂っぽいんだよ!
僕が好きだった彼女は、華奢でスタイルのいいモデル体型だったのに、これじゃまるで脂肪だらけのデブを食ってるみたいじゃないか!
そんなん気持ち悪いわ!
君は、死んでまで僕を苦しめようとするのかよ……!
フザけんなよ! ムカつくことしてんじゃねぇぞ!! 忌々しいメス豚が……!
サイコパスは、狂いだした。
肉の乗った皿を床下にぶち投げると、全体重を乗せて踏み潰した。
フォークとナイフをどこかへ投げ飛ばし、怒りをあらわに暴れだした。
体をグワングワンと揺らし、頭を搔き毟る。
サイコパスは、考えることをやめたかった。
子供のように喚き散らし、とめどない感情を只管に吐き出す。
その動きでカランカランと音を立てる、彼女のネックレスが虚しく泣いた。