LXVI. 同じなのか
人は皆、同じなのか……?
サイコパスは考えた。
ときどき思う。
喜びや悲しみ、怒りや憎しみ、痛みや恐れ。
その感情・感覚は共通のものなのだろうか。
経験からものを言えば「そりゃそうだ」と簡単に答えが出る。
友達と遊べば楽しいし、嫌なことをされれば怒りが込み上げることもあるし、殴られれば痛みが伴う。
分かっている……そんな単純なこと考えるまでもなく分かっている。
サイコパスは、頭を傾げた。
だけど、本当にそうなのだろうか。
例えばだが、あるお笑い芸人を見て大笑いする人もいればクスリとも笑わない人もいる。同じく、ある言葉を言われて激昂する人もいれば何とも思わない人もいる。
だとしたら、笑いのツボや怒れるきっかけが人それぞれ異なるように、痛みを感じる程度も人それぞれであるといえるのではないだろうか。
日々すれ違う千差万別の人間に対して痛みを与える。その時の各々の反応を確認して記録をとる。
それを繰り返すことで、皆同じくして「痛い!」と感じる何かが分かるのではないか。
サイコパスは、答えを見つけた気がした。
人が皆同じなのか……その答えを『痛み』をもって証明してやりたい。