LXXIII. 友達
サイコパスは、人を殺した。
僕は人を殺した。
でも興味本位で殺してしまったから、この後どうしていいか分からない。
そこで僕は友達に電話することにした。
「あ、もしもし、僕だけど、今大丈夫?」
「今? ……うん、大丈夫よ。どうしたの?」
電話に出た友達の呼吸は荒かった。
「なんか呼吸荒くない? 大丈夫……?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっとランニングしてただけだから。それで、何の用?」
「えーっと、少し聞きたいことがあって連絡したんだけど……いいかな?」
「いいわよ、どうしたの?」
「実は……人を殺しちゃったんだ」
「ウソでしょ……!? あなたが殺ったの?」
「そうなんだ。でも突発的に殺しちゃったから、この後どうしていいか分からないんだよ。お願い、力を貸して」
「あー、そういうことね。わかったわ。それじゃ助言してあげるからメモでも取って」
「うん、わかった」
その後数分間、僕は友達の言葉を一言一句しっかりと聞き取り、ペンを走らせた。
友達のアドバイスは、的確だった。
死体の解体の方法。持ち物の処分の方法。足がつかない証拠隠滅の方法。そのすべてをレクチャーされ、僕は必死に頭に叩き込んだ。
「……これで最後かな。なんかわからないことある?」
「ううん、大丈夫、助かったよ。ありがとう」
「またなんかあったら遠慮しないで連絡してね」
「うん、連絡する、ありがとう」
そして僕は電話を切った。
そして僕は思った。
『持つべきものは友達である』と。
困ったことがあったら相談に乗ってくれる。
分からないことがあったら優しく教えてくれる。
自分ひとりじゃどうしようもない時、助けてくれる。
頼りたいときに頼れる存在、それが『友達』。
サイコパスは、友達の大切さを知った。