サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

LXXX. 殺人 ⑧

 

 朝の陽ざしに心躍り、全身が汗ばむほどがむしゃらに走る。公園を駆け抜け、海沿いの砂浜を蹴り、近くのカフェで飲む一杯のコーヒーが喉を潤す。

 息が上がりながらも、店員の眩しい笑顔に癒されながら、疾走感と清涼感、悪いものが体からすべて流れ出るようなデトックスが心地よい。

 

「コーヒーのお替りいかがですか?」

「ありがとう。いただくよ」

 

 太陽と勝負をするように早起きをして、何も考えずに体を動かす。気の向くまま、自然に身を委ね、風に吹かれるのがどうしてこんなにも気持ちがいいのだろうか。運動をした後の朝食はなぜこんなにも美味しいのだろうか。

 

「今日も天気がいいですね」

 

 彼女が微笑んだ。その笑顔で、コーヒーは何倍も美味しくなる。

 

「そうだね。今日も気持ちのいい朝だよね」

 

 僕はついつい嬉しくなり、何度も考えていた気持ちを声にしてみる。

 

「ねぇ、サキさん。お仕事ってもうすぐ終わりでしょ?」

「えぇ。そうですよ」

「予定とかあるんですか?」

 

 一瞬考え込むように、瞳を左右に動かす。そして彼女は答えた。

 

「今のところないです。でもこんな天気だと、海辺でゆっくり過ごしたいものです」

 

 にこやかにそう話す彼女は、お日様よりも眩しく、何よりも美しかった。

 

「だったら、この後一緒にどうです? 海、行きましょうよ」

 

 言葉を発した途端によぎる不安。断られかもしれないと思った。だがそれは、いらぬ心配だったよう。柔らかく動いた彼女の表情が、僕を安心させた。

 

「ええ。ぜひ」

 

 サイコパスは、今日も元気だ。