LXXXVIII. 砂抜き
ジャリ……ッ! うっ……。
サイコパスは、口の動きを止めた。
……最悪。またかよ。
サイコパスは、口の中で噛み潰したものをすべて吐き出した。
テーブルの中に吐き出されたそれは、身と僅かの砂粒。
おいおい! これマジで不快だわー。美味しく食べてるのに急に訪れる「ジャリッ!」。貝とか魚とか、とにかく魚介類を食べるときに起こるアレ。マジ勘弁。不快極まりないわ!
ペッ……!
サイコパスは、口の中に残る違和感を取り除いた。
「おい! 料理長!」
サイコパスは、すぐさま料理長を呼び出した。
「どうなさいましたか?」
「どうなさいましたかじゃねぇよ! ふざけんなよ! この食材しっかり砂抜きしたんだろうなー!?」
おどおどとする料理長。その返答は曖昧なものだった。
「したはず……ですが……」
「したはず……ですが……じゃねぇよ! はずとか言ってる時点でできてねぇんだよ! ぶっ殺すぞ!」
サイコパスは、横暴とした態度でナイフを床に叩きつける。
その怒った様子は恐ろしく、料理長も只管に頭を下げるしかない。
「申し訳ございませんでした! すぐに新しい食事をお持ちします。しばしお待ちくださいませ」
このままじゃ自分も殺されると思ったのか、料理長はそそくさと厨房に踵を返した。
「……おいっ! 待て!」
「はいっ!」
急ブレーキをかけ、振り返る料理長。
「この肉、どこで仕留めた?」
「屋敷前のプライベートビーチにて殺しました」
サイコパスは、考えるようにして頷く。
「どうりで。この肉、塩っけ強いぞ!」
「申し訳ございません!」
サイコパスは、薄味がお好み。