サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

CV. 尊殺

 

 サイコパスは、……。

 

 自尊心を傷つけることが何よりも有効な殺害方法だと知っていた。

 生まれ出でて此の方、言い寄ってくる男に困ったことはない。だからこそ、男を傷つけることがどんなに楽しいかを知ってしまった。

 女は創られた遺伝子に写っていた情報に従っただけ。

 自信ありげな男の、満足げな男の、優越感に浸る男の潰れる顔が見たかっただけ。そこのシーンにだけ、本当の意味での快感が存在した。

 甘い言葉で信じ込ませ、裏切り、涙を零し、また裏切る。心底信じ切った男ほど、裏切る快感が至極の悦びだった。「好きだよ」なんて誰でも誰にでも言える安い言葉に溺れていると勘違いしている男の苦悶の表情は、甘いスイーツを食べる感覚に等しく、周りが見えなくなるほど夢中になった挙句に怒り狂った男は、哀れすぎて笑えてしまった。

 あなたのものじゃないと気づいたとき、絶望を感じた男は心が死んだ。

 虚ろな瞳で空を見る。

 何も手につかず廃人と化す。

 もう二度と人を信じることができなくなる。

 そうなった男たちを見ていると、女は純粋に気持ちよかった。

 

 サイコパスは、……。