XLI. 悪魔
サイコパスは考えた。
サイコパスは、どうして嫌われるのだろう。
サイコパスは、どうしてみんなから嫌悪の眼差しを向けられるのだろう。
サイコパスは、どうして友達ができないのだろう。
サイコパスは、どうして常人としての扱いを受けることができないのだろう。
サイコパスは考えた。
サイコパスは、人の感情が理解できない。
サイコパスは、自分以外を道具として扱う。
サイコパスは、常識で言う『悪』が理解できない。
サイコパスは、人の命の重さを計ることができない。
サイコパスは考えた。
でも……本当に分からない。
人の命がこの世界で一番重いと言われても、ピンと来ない。
人はなぜ、人の命が最も尊いものだと自信をもって言えるんだ……?
常人は、憎しみから人を殺める。
常人は、娯楽で生き物を狩る。
常人は、いろいろなものを食べる。
常人は、様々な生き物を実験に利用する。
つまり、常人は直接的にも間接的にも、多くの生き物の命を奪っている。
それに比べサイコパスは、理屈なしでは生き物を殺さない。
常人は、相手の痛みが理解できるのに他人をいじめる。
常人は、自分の力を証明するために相手をねじ伏せる。
常人は、お金の力で人々を動かす。
常人は、権力で自分の思い通りに世の中を支配する。
つまり、常人は性格が捻じ曲がっていて、他人に説教できる立場にない。
サイコパスは考えた。
本当にこの世界に必要ないのは……常人だ。
その答えは明白であり、ゆるぎない。
本当に質が悪いのは、サイコパスではなく、常人だ。
頭では理解できているのに、常人は感情に流されて動く。
意味のない殺生を繰り返し、満足を得る。
常人は、まるで『悪魔』のような存在だ。
そう考えると、世の中は本当に恐ろしい場所である。
質の悪い『悪魔』で溢れた社会。その『悪魔』は今もなお増え続け、世界中の生き物の頂点に立った気でいる。
……駆除しないといけない。
サイコパスが、『悪魔』をこの世界から排除しなければならない。
そうだ……だからこそサイコパスは存在するんだ。
サイコパスは考えた。