サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

XCIV. 好きだからこそ

サイコパスは、同僚に相談した。 「最近好きな人ができたんだけど、どうしたらいいと思う?」 相談した相手もまた、サイコパス。 同じサイコパスだからこそ、悩みを打ち明けた。きっといい答えが聞ける。そう思って彼は、サイコパスである会社の同僚に悩み相…

XCIII. 叩殺

サイコパスは、……。 銀行にて立て籠もり。多くの人質がとられている。 警察は要求に応えない。犯人は人質を一人ずつ殺すと宣言。それでも狼狽えない警察。 マスコミの目の前に頭陀袋が投げられる。よく見るとそれは人間。 顔面は見る影もないほどズタズタ。…

XCII. 泡

サイコパスは、ゲホゲホッ……ゲホ。 今日の朝、急いでお風呂に入った。 頭洗って、体洗って、そして洗顔。 その時だった。死ぬかもしれない……そう思ったのは。 思い切り泡立てた洗顔料を顔一杯に塗りたくって、手の平で転がす。今思い返せば、泡のほとんどが…

XCI. 目障り罪

優先席に座る、平気で通話する、見た目ヤンキー。はい、死刑。 派手なベルト、夜なのにサングラス、横柄な態度。はい、死刑。 茶髪、日サロ黒、キャップ、キツい香水。はい、はい、死刑。 マナーがなっていない、自分のことをカッコいいと勘違いしている、典…

XC. 殺人 ⑨

波の音にその身任せ、隣にいる美しい女性の横顔を盗み見る。 幸せといえるこの時間、朝7時の太陽は優しかった。 「綺麗ですね」 彼女が言う。 「ええ。綺麗です」 僕が言う。 「サキさんは、海好きなんですか?」 「う~ん。好き。よく一人で来たりする」 輝…

LXXXIX. 靴

サイコパスは、コレクションを見てしみじみと感じた。 おもしろいよね……靴って。 サイコパスは、靴に対して不思議な感情を抱いていた。 それも新品の靴じゃなく、何年も履き潰したようなおんぼろ靴。 人が履いた靴には、歴史が詰まっている。 その人の思い出…

LXXXVIII. 砂抜き

ジャリ……ッ! うっ……。 サイコパスは、口の動きを止めた。 ……最悪。またかよ。 サイコパスは、口の中で噛み潰したものをすべて吐き出した。 テーブルの中に吐き出されたそれは、身と僅かの砂粒。 おいおい! これマジで不快だわー。美味しく食べてるのに急に…

LXXXVII. 赤ワイン

サイコパスは、ワインを口にして一言。 ――美味い! ワインは、赤と白があるが、私はもっぱら赤が好きだ。 渋みとコクが口の中に広がっていき、舌の上の10,000個の味蕾を刺激する。 その瞬間、欲しくなってしまうのだ……厚めの極上肉が。 君たちだってそう思う…

LXXXVI. 形なき形

整形……形を整えること。 整形にはいろいろな意味があるが、そのほとんどは「ブサイクな顔をキレイにすること」の意味で用いられる。 生まれたときの顔では満足できない……だから整形する。 というよりは、ブサイクが故に虐げられてきたから顔を変える。オブラ…

LXXXV. ヒートショック

お風呂での死亡事故って案外多い。 ウソでしょ、お風呂で溺れる? そんなことあるの……!? そう思うのも当然かも。 一日の疲れを癒そうとして、自らの意思で入った浴槽で死ぬなんてちょっと可笑しい。「極楽、極楽……」って言いながら気持ちよさそうに死んじ…

LXXXIV. 時代が親切心を殺す

サイコパスは、今日見た風景をそのまま話す。 電車の中。向かい側に座る女子中学生ふたりが目に入った。 その隣には、おばあちゃん。歳は、おそらく70ぐらい。その隣にはおばあちゃんの息子らしい男性がいた。年齢は30代後半ぐらいだ。 電車が進み始めると、…

LXXXIII. 暴食

サイコパスは、パンパンに膨れ上がったお腹をさすった。 お腹を刺激する何かが蠢く。 きりきりと痛むお腹の中から、胃を突き破って出てきそうだ。 もし仮に、お腹の中で共同体となったらどうする? 一つの意識を共有する集合体に化けていたらどうする? 一つ…

LXXXII. かわいい子が好き

サイコパスは、今日も仕事だ。 朝起きて、お風呂に入る。朝食を食べる時間はないけど、一杯のコーヒーだけは忘れない。歯を磨いて鏡でチェックして、家を出た。 いつもの電車にいつものドアから乗り込むと、いつもの席に腰を下ろした。誰もが好きな、シート…

LXXXI. 抉殺

サイコパスは、……。 憎しみ、怒り、愛。 行き先は、冷酷。 人は人を憎み、憎んだ記憶は忘却できない。憎しみは些細なことで掘り起こされ、怒りはすぐさま沸点に達する。 愛せば愛すほどに、愛は愛を歪ませる。 歪んだ感情はまっすぐに突き進む。どんなに固い…

LXXX. 殺人 ⑧

朝の陽ざしに心躍り、全身が汗ばむほどがむしゃらに走る。公園を駆け抜け、海沿いの砂浜を蹴り、近くのカフェで飲む一杯のコーヒーが喉を潤す。 息が上がりながらも、店員の眩しい笑顔に癒されながら、疾走感と清涼感、悪いものが体からすべて流れ出るような…

LXXIX. 似ている人は3人いる

サイコパスは、知人に似た人物を見かけた。 それも、突然。 突然の出来事に驚いている。 年が離れているから本人かもしれないって思うことはなかったけれど、そのソックリぶりに、自分の目を疑った。 目元が似ていて歯並びもソックリ。まるでその知人の妹の…