サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

XXXVI. 魅惑の踊り子

 

 カチッと蓋を開け、ジッとジッポライターの火をつける。

 

 火を見ると、なんだかとっても気持ちがいい。

 

 サイコパスは、子供のころから火が好きだ。

 

 新聞紙にライターで火をつける、お肉を直火で真っ黒に焦げるまで焼く、理科の授業中、ガスバーナーを意味もなくつけたり消したりを繰り返す。

 

 子供のころは、よくそんな遊びをしたものだ。

 

 サイコパスは、眼のすぐ前にまで火を近づける。

 

 本当に火は綺麗だ。

 火の根元はクールな青色を帯びているのに、中心の色は情熱的な赤色。そして外側を包む鮮やかなオレンジ色。その絶妙に美しいグラデーションに心惹かれる。

 

 ゆらゆらと揺れ動くその火は、踊っている可憐な女性にも見える。

 

 サイコパスは、ライターを近づけて見知らぬ家に火をつけた。

 

 この瞬間が、唯一の愉悦。

 

 小さな火から始まり、徐々に徐々にと大きくなって炎となる。

 メラメラと燃え盛るその様子は、何度見ても気持ちがいいものだ。

 

 瞳に映るその炎、その踊る女性の煌めく姿に魅了され、心躍る。

 

 サイコパスは、炎のダンスに魅了された。