XXXV. 専業主婦
ピピピピピピピピ……
目覚ましの音で目を覚ます。
本当はもっと寝ていたいけど、そうも言っていられない。
サイコパスは、今日も忙しい。
朝早くから起きて、高校生になる子供のお弁当を作り、会社員である旦那のために熱々のコーヒーを入れて朝食を作り、子供と旦那が家を出たら、今度は洗濯に掃除、少しお昼寝を挟んで、気分は乗らないけどご近所付き合いのためにカフェに集まってお茶して、その後スーパーで夕食の材料買って、支度して、子供が帰ってきたら反抗期特有の荒れたセリフを吐かれ、旦那が帰ってきたら、お風呂溜めろだの、飯がマズイだの、俺が一生懸命働いて稼いできているおかげで家庭は成り立っているんだ、だの、いろいろ言われ放題で、みんなが寝静まってからも食器を洗う仕事がまだ残っていて、お風呂入って、寝る準備して、結局自分のやりたいことなんて何もできずに一日が終わる。
でも……
サイコパスは今の生活が苦痛じゃない。
家族に何を言われても、優しく接してくれなくても、全然イライラしない。
だって家族のことなんて、なんとも思ってないもの。
サイコパスは、いつでも殺せる。
やろうと思えば今この瞬間にも、子供の首をこの手で絞めて窒息させ、旦那の体を出刃包丁でズタズタに切り刻むことだって容易。
日常的にやっている家事に比べれば、そんなこと簡単なこと。
毎日のお弁当、食事のレシピを考えることは、みんなが思っているより結構大変。
でも家族を殺そうと思えば、一夜で終わる。
うふふ……簡単でしょ。
だから本当に今の生活に嫌気がさしたら、すぐ実行に移す。
いつだって自分の思い通りにできる。
そう思うと、子供の暴言も旦那の嫌味も全然気にならない。
ピピピピピピピピ……
サイコパスは、今日も楽しく家事をこなす。