XXXVIII. 枯れぬ花
サイコパスは、初めからイカれているわけではない。
この世に生を授かった時点では、常人とサイコパスを見分けることは困難である。
違いは何かと聞かれたら、こう答えよう。
その種は、誰にも見ることのできない、形なき物であり、その存在を証明することも不可能だ。
だがそれは、確かに存在する。
人間は誰しもが、赤子から子供へ、移り変わりの激しい思春期を越え、そして大人へとなっていく。
その過程と同じくして、サイコパスの種は成長する。
種が芽を出した頃、小さく身近な生き物、虫を殺めることを覚える。
芽が伸び蕾をつける頃、さらに小動物を殺めることを覚える。
そして無数の棘を持つ、美しき花を咲かせたときにサイコパスは人を殺めることを覚える。
深紅に染められた、黒々とした痛々しい一輪の花。
徐々に徐々にと栄養を与えられて育てられた美しきその花は、枯れることを知らない。