サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

LIV. 面接

 

 サイコパスは、面接に立ち会った。

 

「はい、それでは、あなたのお名前を教えてください」

 

 サイコパスは、マニュアル通りに面接を始める。

 

 だが……退屈だ。

 この人ですでに20人目だが、ここまでに面白い人が一人でもいただろうか。

 即答できる……ノーだ。

 

 同じような制服に身を包み、マニュアル通りの受け答えを繰り返す時間。

 全くと言っていいほど、時間の無駄だ。

 

 うちの会社は出身大学に注目を置く方針らしいが、本当にばかげている。

 どこの大学を出たかどうかなど、正直意味はない。

 大卒でもつまらない人はいるし、学歴がなくても面白い人はいる。 

 結局のところ、いい大学を出ようが大学を出ていまいが、そんなことで人の価値は測れない。

 

 サイコパスは、無駄な時間にイライラする。

 

「はい、それでは、次の方お入りください」

 

 これで最後……ようやく面接が終わりを迎える。

 

「失礼します」

 

 顔の整った、実に大人っぽい男性が顔を出す。

 

 サイコパスは、体の中を走る衝撃に心震えた。

 

 そいつは完全に普通ではなかった。

 

 常人が見ただけでは気づくことができないと思うが、私にはすぐに分かった。

 

 瞳の奥底から溢れるエネルギー、その色はどす黒く畏怖の念を感じさせる。

 妙に落ち着いていて、就活生特有の不安や緊張が感じられない。

 

 実際に面接をしてみても、受け答えがしっかりしており、自分の考えに迷いがないように見られる。

 私は、明らかに常人より優れているその男に、親近感を覚えた。

 

 私と同じような素質を持っていると確信した。

 

 サイコパスは、サイコパスを見分けられる。