LXIV. 28、多くて32。
最も大切だと私は思う。
生きる上で、長く生きる上で、最も大切なものの数が、28、多くて32。
これがなければ、生きることは難しくなる。たとえ生きられても、ひ弱になる。
永久に付き合うそのものは、力となる。
痛みと闘う時も、悲しみと向き合う時も、恐怖に立ち向かう時だって、そのすべてがなければ耐えられない。
28、多くて32。
28、多くて32。は、自分だけでなく、周りの者を明るく照らす。
誰かと、大切な誰かと同じ時間を過ごし、肩を寄せ合い、幸せを分け合う。
28、多くて32。は、その時の幸せの象徴ともなる。
28、多くて32。
生きる武器として、そして、喜びを共有することのできる、28、多くて32。
だがそれは……極めて繊細である。
想いが強すぎれば、それは傷つけられ脆くなる。
想いがなく怠けた態度をとるならば、それは瞬く間に輝きを失い朽ちていく。
28、多くて32。
一度失えば、もし大切にしなければ、二度と元に戻ることはない。
だがしかし……遅かった。
サイコパスは、そのものの大切さに気付くことができなかったのだ。
心なしに力だけを込め続けた。
傷つけているなんて思っていなかった。
想いやりが欠けていたんだ。それで何もかもが欠けてしまった。自分の行いがそのまま跳ね返ってきたんだ。
サイコパスは、28、多くて32。を失ってしまった。
ボロボロと崩れ落ち、見るも無残な姿に成り果ててしまった。
後悔と自責の念に駆られ、泣き喚こうにもうまくいかない。
仲の良い友人も、好意を寄せている人物も、私を見る目が変わっていった。
失って初めて気づくこと。
それが、28多くて32。だった。