LXIX. 苦の粉
サイコパスは、苦しんでいる。
やばい、ヤバい、マジ……ヤバすぎる。
今までオレもいろいろな粉に手を出してきたけど、こいつはヤバすぎるぜ。
なんてったって、中毒性も快楽もないのに、苦しみだけは襲ってきやがる。
吸ってる感覚がなくても勝手に体の中に入ってくるし、制御もできやしない。
幻覚、幻聴、そんな普通の現象は起きやしない。
こんなにヤバい粉が世の中にあったなんて……正直驚きだな。
こんなもん、使い方によっちゃ、テロに使えんじゃないか……?
戦争だって起こせそうな勢いだぜ!
……いや、待てよ。
噂によると、この粉、実は金よりも高値で取引されているらしい。
だったらこの粉、たくさん集めて荒稼ぎできるじゃねえか!?
……いや、ちょっと待て。……やっぱり無理だ……。
この粉を調達するだけで、俺の体は悲鳴を上げるに違いない。目を開けておくのも辛いし、痒いは、ズルズルだわで……死んでしまう。
サイコパスは、苦痛の色を浮かべながら、ティッシュに飛びついた。
――ハックション……!!
……だめだわ……花粉症。