サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

XCII. 泡

 

 サイコパスは、ゲホゲホッ……ゲホ。

 

 今日の朝、急いでお風呂に入った。

 頭洗って、体洗って、そして洗顔

 

 その時だった。死ぬかもしれない……そう思ったのは。

 

 思い切り泡立てた洗顔料を顔一杯に塗りたくって、手の平で転がす。今思い返せば、泡のほとんどが口周りに集中していた。

 そしてわたしは、何を思ったか、息を吸い込んだ。

 そのあとは一瞬の出来事。

 

 サイコパスは、死ぬかと思った。

 

 空気と一緒に口の中に入り込んだ、泡。

 泡が口一杯に入り込んで呼吸を妨げた。

 もちろんわたしは、何が起きたか分からずパニックになり、そのままゴクリと泡を飲み込んでしまう羽目に。

 

 そしたら……痛いのなんの。

 

 喉がイガイガしてすごく痛い。

 運悪く、使っていた洗顔料はスクラブ入り。粒粒が喉を傷つけたのではないかとすぐさま判断。でもどうすることもできない。

 パッケージの裏を見ても、注意書きには「目に入った時には――」としか書かれていない。

 

 いやいや! 飲み込んだ時の対処法を書いておいてくれよ!

 

 心の底からそう思ったが、すでにわたしのお腹の底では洗顔料が泡立っている。

 

 それよりなにより……喉が痛い。

 

 サイコパスは、とりあえず水をがぶ飲みした。

 

 洗剤を飲んでしまった時には牛乳か水を飲む。そんな曖昧な知識を持っていた。だからわたしは、必死に水を飲んだ。シャワーから溢れる水をがぶがぶがぶ。

 

 さらに、うがいも忘れない。

 

 これでもかと、喉の奥底から洗顔料を引き上げる感覚でうがいうがい。

 吐き出した水は明らかに少し泡立っている。

 でもこれで、いいはず。

 

 サイコパスは、冷静になって考えた。

 

 でも待って……喉バリクソ痛ぇ。

 

 サイコパスは、不安に苛まれた。

 

 とにかく喉が痛かった。胃の中がどうとかそんな話ではなく、とにかく喉。

 呼吸もままならないほどに喉がイガイガ。

 

 喉よ、喉。とにかく喉が痛いのよ。

 

 サイコパスは、病院に行くか迷った。

 

 でも結局、しばらく様子を見ることに。

 

 サイコパスは、ゲホゲホッ……ゲホ。

 

 まだ……痛ぇ……。