サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

XCIII. 叩殺

 

 サイコパスは、……。

 

 銀行にて立て籠もり。多くの人質がとられている。

 警察は要求に応えない。犯人は人質を一人ずつ殺すと宣言。それでも狼狽えない警察。

 マスコミの目の前に頭陀袋が投げられる。よく見るとそれは人間。

 顔面は見る影もないほどズタズタ。唇は腫れあがり、歯は欠けている。炎症を起こした頬肉が目を潰している。おでこの肉はざっくりと引き裂かれ、空気に触れた赤黒い肉がピクピクと痙攣を起こしている。力任せに金槌を振り下ろされたであろう顔の中心には潰れた鼻が粘り気のある液体を出している。

 その無残な光景に誰もが人であることを疑った。

 肉。赤黒く。ボコボコに。血が垂れる。ぐちゃぐちゃの粘土。のような人間。

 カメラに訴えた犯人の意思は嫌というほど伝わった。

 この時銀行の中では、無作為に選ばれた人質が次々と撲殺されていた。犯人は苦しめながら人を殺す快感に酔いしれ、死んでもなお問答無用に殴る蹴るを繰り返した。

 鉄板の入った靴は容易に顔面の肉を潰し切り裂いた。メリケンサックや金槌のような武器を惜しむことなく使うことで、次に撲殺されるのを待つ人質に恐怖を植え付けていった。

 

 犯人は知っていた。

 

 無能な警察が警察組織という名のプライドを守るが為に要求に応えないことを分かっていた。人質の安全など微塵も考えないことを犯人は分かっていた。

 だから犯人は見せつけた。

 人質を残酷に殺すことで国民に教えた。

 金なんて目的ではなかった。

 犯人は人質を殺すことで、人の命を無下にする警察という偽りの正義を叩き潰したかった。

 

 サイコパスは、……。