サイコパスの素顔

小説を書いています。映画レビューもしております。

CII. 内臓吸い取り機

 

 正月ということで、少し笑える話をしようじゃないか。

 正月ぐらい、残酷な話は控えたほうがいいだろ。

 正月なんだから、みんなで楽しく過ごしながらお餅でも食べようではないか。

 

 サイコパスは、お餅を頬張った。

 

 口の中に広がる粉っぽさ、それと同時に舌に絡みつく甘さは、お餅の弾力と良く合う。口の中一杯に押し込んだきな粉餅は、一瞬にして幸せな気持ちになる。

 お雑煮、きな粉餅、あんこ餅、もちもちもちもちもち。

 

 正月に食べる、餅はうめぇ!!

 

 そんな時……

 

 サイコパスは、ふと、思った。

 

 喉を通る途中でねちっこく跳ねたお餅が、毎年恒例の事故を思い出させた。

 

 お餅で亡くなる人……毎年絶対にいるよな。いないことなんてない。必ず一人や二人は喉に詰まらせる。

 

 新年に死んでしまうなんて不幸なことだが、本当に興味深いもんだよな。

 

 どうして、おめでたい日にお餅を詰まらせるのか。

 どうして、縁起物のお餅を食べて死んでしまうのか。

 どうして、注意喚起をしてもなお死人の出ない新年が始まらないのか。

 

 ……でもまぁ、何度も同じ間違いを犯すのは人間の専売特許のようなものだ。こんなことを考えていても、お餅で喉を詰まらす人がいなくなることはないのかもしれない。

 

 でもそんな時……

 

 サイコパスは、パッと閃いた。

 

 それは、餅を詰まらせない方法だ。

 この方法ならきっと、死人なしの新年を迎えることができるのではないかと思う。

 その方法は、ある情報からヒントをもらったんだが、よく言うだろ。「万が一、喉にお餅を詰まらせた場合は掃除機で吸ってください」って。

 ちょっとバカっぽい発想だけど、割と効果があるらしい。自分でやったことはないけど、応急処置にはなるんだとか……。

 

 だったら、いっそのこと「お餅吸い取り機」でも作ればいいのに。

 

 サイコパスは、そんな発想に辿り着いた。

 

 万が一の時にでもすぐに対処できる画期的なアイテム、一家に一台、「お餅吸い取り機」の常備を促したらどうだ。

 仕様はほとんど掃除機と一緒。違うのは、何とかソンにも負けない絶大な吸引力で喉に詰まった異物を確実に吸い取る力。

 

 これさえあればもう安心! 正月にお餅を食べて死ぬ人なし!

 

 どうだろうか? こんなアイテムが実現されれば、絶対にいいと思うんだが。

 

 ……あっ……でも……

 ちょっと待てよ……。

 

 サイコパスは、もう一つ考えた。

 

 「お餅吸い取り機」を作るついでにもう一つお願いしたい、あるアイテム。

 「内臓吸い取り機」……作ってもらいたいかも。

 

 サイコパスは、ちょっと不満を吐く。

 

 いつも思ってたんだけど、人間の処理ってすげぇめんどくさいわけよ。

 内臓をいちいち取り除く作業が辛いのなんの。

 それに加えて、腹を裂いて内臓を出すと、部屋は汚れるし鮮度は落ちるしで大変なことだらけ。

 だからこそ、喉に掃除機突っ込んで内臓一気に引きずり出せたらどんなにいいことかと、ふと思っちゃった。

 

 喉に詰まったお餅をスポッと吸い取れるぐらいの吸引力が搭載できるならきっと内臓を吸い取る技術力もあるはず。

 

 頼む! 

 バカっぽい発想で申し訳ないが「お餅吸い取り機」・「内臓吸い取り機」どっかの企業が作ってくれ!

 

 そんなことを祈る、イカれたお正月!

 結局残酷な話で、胃がもたれる!